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Ryo爺の独り言

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月夜の小事  
名前:Ryoji    日付:2013/8/24(土) 9:57
未明の夢うつつの中で、ある光景が甦った。それは私が定時制(夜間)高校に通っていたときの、50年以上も前の出来事である。いつもは中士別の自宅から道道を自転車で走って6q離れた士別高校に到るのだが、その頃の道道は舗装されていないソロバン道路で、しかも交通量は多く、クルマが通ると舞いあがる土埃で学生服が汚れた。色気づいてきた私は、営林署の苗畑を迂回するコースをとると、少し遠くなるが交通はまれにしかなく、専用道路のように走れることを知って、時間に余裕のある日はそのコースを走った。

陽は西の山に沈み、夕暮れが迫っていた。さっきまで白かった月が黄色みを帯びはじめている。途中、道端に泣いている男の子がいた。男の子は小学1年生くらい。自転車を止めて、どうしたのか尋ねると泣き声は激しくなるばかり。道に迷ったのかと尋ねると、うなずいたが、息がとぎれて言葉にならない。お兄ちゃんが帰れるようにしてやるから心配するな、と言ってようやく落ち着かせ、名前や住所を聞いたが要領を得なかった。当時私は18歳、私自身が田舎者で、自宅周辺と通学路くらいしか知らなかった。で、橋を渡ったかどうか聞いてみた。渡った、と言った。行く先にある九十九橋は町と農村の境目にある。つまりこの子は町からやってきたようだ。
そうこうしているうちに月はますます明るく、暗闇は濃くなってきた。授業時間は迫っている。私は少し遠回りになるが、当時グリーンベルト南端にあった警察署に連れていくことにした。荷台に乗せた男の子は、後ろから私にしがみついていた。署の窓口でお巡りさんに状況を話し、その子を頼んで、即刻、学校へUターンした。かなり遅刻したように記憶している。

その後、男の子がどうなったか知らない。きっと子供の親が駐在所に相談し、本署から身柄をあずかった連絡が行って、無事帰宅できたものと思う。
署に届けてくれたのは夜間高校の生徒で、その善意云々を言いたいのではない。私がいま想像するのは、あの男の子が道に迷ったときの心境である。街灯などなく、月夜とはいえ次第に闇が深まり、まるで異界に入ったような心境だったろう。恐怖のあまり泣くしかない、しかし大声で泣いても誰もきてくれない。途方にくれた絶望のどん底で、乏しいライトを点けた自転車がやってきた……。その時、私は救いの神になった。

私には男の子の顔は記憶にない、暗くてよく見えなかったように思う。おそらくその子も私の顔をはっきり見ていないだろう。お互いに知らない同士のまま、人生の時間と空間の中でほんの少し接触したに過ぎない。男の子の推定年齢から計算すると、彼は現在還暦を迎えたころである。あの日の出来事を覚えているだろうか?


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