何を指して言ったときだったか忘れたが、テレビのニュースでアナウンサーがよくない出来事の要因について「……の可能性がある」と言った。抽象的で何を言っているかわからないかもしれないから、強いて例をあげれば「逃亡の可能性がある」というような場合、こんな使いかたはおかしい。これは「逃亡のおそれがある」というべきだろう。 こんな違和感を覚えたことが2度ほどあって、「……可能性がある」は、私の耳には気になる言葉になっていた。
先日、清水義範の『日本語の乱れ』を読んでいたら、同じような事例が出てきた。以下に引用する。 「ニュースで、『誘拐された可能性もあり……』ということを言っていたが、可能性とは、それが可能だという度合いのことで、うまくいく率、ということだ。だから悪いことを予想した時に可能性というのは変だ。誘拐されたのかもしれない時は、そのおそれもあり、であろう」 わが意を得たりと思ったが、この本は20年も前に発刊されており、つまりTVのアナウンサーは20年も前から、いまだに誤用を平気でやっているということになる。
またあった。天気予報を見ていたら「午後は雪が降り、空の便に影響が出る可能性があります」と。これだって、おかしいだろう。「影響が出るおそれがあります」でないのか。 ……でもなあ、と考えた。たとえば「低気圧の接近で大雪が降るおそれがあります」というのは正しい使い方とは思うが、今冬は記録的な降雪量の少なさでスキー場が開設できないとか、雪まつりの雪像つくりにあちこちから雪をトラックで運んで集めているとか聞くので、この場合、「大雪が降る可能性が高い」と言われたほうが、北海道に住む者の気持ちに添う使い方のように思えてきたが、どうしたものだろう。わけがわからなくなってきた。
|
|