トランペットに似たマウスで吹くトロンボーンという楽器、いままであまり聴いたことがなかったのだけれど、ちょいと聴いてみたらこれがなかなかの味わい。力を込めて吹けばバーンと凄い迫力だし、スライド移動のせいなのかモタモタした感じがなんともユーモラス、このたゆたうような緩い感じはトランペットでは出せない音色だ。
あの長いスライドを伸縮させて音階を決めるのだから、近い音ならともかく、音階の離れた音なら、それも短いパッセージを連続して出すときなんか、スライド移動に腕を素早く前後させなければならないから難しいだろうな、とは想像がつく。想像はつくものの、実際の演奏を聴いていて、どこが容易でどこが難しいか、素人にはさっぱりわからない。
J.J.ジョンソンは完璧なテクニックといわれるが、どの当たりが凄いのかやはりわからない。ただジャズとして面白いかどうかだけの感覚で聴いている。そして興趣があって面白い。もう一人有名なカーティス・フラー、「Five Spot After Dark」のハモるところは何べん聴いても気持ちいい、ソロも黄昏どきのブルーな感覚がたまらない。技巧を比較して聴く気はまったくないので、どっちが上手いとか下手とかはどうでもいい、むしろモタモタしてくれたほうが楽しい。私が多く聴くのは後者のほうだ。いろいろ聴いていたら、もっと古い時代に活躍したベニー・グリーン(現在活躍中のピアニストと同名)という人がいた。この人の緩くてほのぼのした音色もたまらなくいいなあ。
老いて、だんだん“ゆるキャラ”化してきた身には、トロンボーンの味わいがぴったり。テレビ、パソコン、読書で目がしょぼついてきたら、目をつぶってトロンボーンのゆるゆる、もたもたに浸っている。
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