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Ryo爺の独り言

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解きあかされた『大菩薩峠』の謎  
名前:Ryoji    日付:2017/8/20(日) 15:33
中里介山作『大菩薩峠』は、@長過ぎ(トルストイの大作「戦争と平和」より長い)、A文章がまだるっこしい(まるで講談調)、B登場人物とストーリー展開の辻褄が合わなさ過ぎる(仇討ち物語のはずが、登場人物がだんだん増えてきて主人公が誰かわからなくなり、収拾がつかなくなる)……。だから、おそらくお終いまで読んだ人は少ないのでなかろうか。

私は青空文庫で、筑摩書房版を、耐えがたきを耐えて一応全巻読んだ。読み始めると異様な緊張感が張りつめ、どきどきするほど面白いのに、どうにも不明瞭な個所が多すぎ、魅力はあるが困惑させられる小説という印象だった。このたび、伊東祐吏『「大菩薩峠」を都新聞で読む』を読んで、その謎が解けた。

なんと、都新聞に連載中は構成はきちんとできていたのを、単行本にするさい作者自身が30%も削除し、残した文章も推敲したのは冒頭部分くらいで、ほとんど削除しただけの形で出版した……不明瞭さはそのせいだとわかった。当時、介山は新聞社の一社員で、まだ有名になる前だったので、そういう縮少の条件を余儀なくされたらしい。

それにしても、未完の大作として何度も全集本が発刊され、文庫化までされているのに、また評論、研究書も多く刊行されているのに、この穴だらけの削除版を完全版と思い込んでいたとは。なぜいままで、最初の都新聞の掲載文に当たってみることをしなかったのか、出版社も研究者も一体なにをやっていたのだろうか。

明らかになった部分は多々あるが、たとえば冒頭の、御岳神社の奉納試合で対戦することになった宇津木文之丞の妻お浜が、妹と偽って机龍之助に面会し、勝ちを譲ってほしいと懇願する件。龍之助は「勝負は女の操と同じこと、勝負を譲るは武道の道に欠けたること」ときっぱり断り、その上で卑劣にも下男に命じてお浜を拉致させ、水車小屋で手込めにし、さらに試合で文之丞を一撃で殺してしまう。すべて龍之助の所業のように解釈されてきた。映画もそのようなストーリーになっている。

しかし新聞掲載文では、水車小屋に若先生を探し回っている門下生の騒がしい声(机家に七兵衛が泥棒に入った)が聞こえ、龍之助に悪さをする暇はなく、お浜の縄を解き、女の操と例えたことについて「お山の太鼓(試合開始)が朝風に響くときまでにこの謎を解けまいものか」と言って立ち去る。つまりこの段階では手込めにしてはいないのだ。そして翌日、お山に向う龍之助にお浜の手紙が届けられ「強き男は世にも憎らしけれど、優れて頼もしきものを、今日の試合に勝ち給え」とあり、お浜は明らかに変心し、夫文之丞を見限って龍之助を誘惑している。魔性の女の一面を描く、この部分が無造作にカットされていた。

伊東氏がまるで虫眼鏡で確認するように照合作業をやってくれたことで、辻褄の合わないところが明らかになった。すでに氏の校訂による『大菩薩峠 都新聞版』(全9巻/論創社)が刊行されている。井川洗崖[♯山かんむりなし]の挿絵も入っていて、オールドファンには懐かしい読み物かもしれない。ただし、講談調の文体と、登場人物がどんどん増えて、主人公が誰やら判らなくなる展開は変わらないと思うが。


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