「猫、また増えたの」と、彼女はあきらめたように言った。しかし目は笑っている。娘さんが野良猫を拾ってきたのである。しかもその猫は目が見えない、おまけに孕んでいる。
酷い飼い主がいたもんだ。生まれたときに目に異常があった。それを承知で治療もせずに飼い続けていた。それは良いとしても、雌は発情期になれば交尾をして孕む。それを避けるために、飼い主は必ず避妊手術を施さなければならない。費用を惜しんで、放置して、孕んだとわかったら捨て、野良にした。なんと非情なことを・・・。
飼い主に見放された盲目の猫は生きていけない。胎児と共に餓死する運命にある。寒空に餌を求めて彷徨(さまよ)う猫を、「可愛そう」と娘さんは拾ってきた。
すでに犬一頭、猫五匹を養っている。子犬が深い側溝に落ちて吠えていた。消防署に連絡して犬を救出した。「保健所へ持っていきますか」と隊員に問われると、反射的に「私、飼います」と、それが今の犬。
猫五匹もすべて捨て猫である。「可愛そう…」で彼女たちが面倒をみている。盲目の猫は二匹の子を産んだ。警戒心が強く難義しているそうだ。他の猫と隔離して三匹の世話をしている。
母娘は優しく、捨て猫、捨て犬を見過ごせないのである。。
「餌代が大変だろう」と聞くと、「そう、だけど病院代がもっとたいへん。犬、おしっこが出なくて薬飲ませているの。猫5匹もいれば喧嘩するでしょう。傷を負って、これも病院、たいへんなの」母一人、娘一人の生活に余裕があるわけではない。困っているだろうが、あきらめたように明るく笑う。
「それだけ尽くせば、恩返し、きっとあるよ」と、同情すれば、 「どうかしら」と応える。「でも、みんな迎えに出てくれるわ。我が子よ、可愛くてね、疲れがとれるわ」と笑う。
母娘に幸あれ・・・。
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