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藤原雄一郎のクルーズワールド理論編

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127.クルーズと環境問題  
名前:藤原雄一郎    日付:2007/10/25(木) 6:57
環境問題が世界的な広がりを見せている現在、クルーズ業界も環境問題については真剣な対応をしています。クルーズの場合、環境的に大きな問題になるのは事故などによるオイルの流失です。例えば地中海で沈没したルイス・クルーズの場合、多量のオイルが海水中に流れ出ました。この場合は2億円近い罰金が科せられました。

事故でない場合、排水、大気汚染、固形物などの海中投棄に加えて、燃料消費の削減などがその対象となります。中でも排水処理は大きな問題です。排水には船底にたまる汚水(ビルジ:油などが含まれる場合もある)、シャワーなどの排水、トイレやドレンなどから排出される水の三種類に分けられます。これらの排水をそのまま海中に排出することは水質汚濁に結びつき、環境問題を引き起こす最大の問題です。

しかしこれがなかなか進まないのです。一例としてバルト海を航行しているクルーズ船やフェリー会社50社に排水の自主規制に関する意向調査をしたところ11社しか前向きの回答がありませんでした。しかし業界が無関心なわけではありません。最新式の排水処理装置を備えたり、色々と努力をした結果、この10年間に、クルーズは毎年7%の増加を示しているにもかかわらず、排水量をほぼ半減しています。

また大気汚染に関しては、港に停泊中には、陸上から電源供給を受けたり、中にはエンジンの排ガスを海水で洗う装置までつけている船さえあります。また燃料を効率的に使用するために、航路やスピードの調整をしたり、様々な試みもなされています。燃料消費量の削減は環境にやさしいだけでなく、原油高騰の昨今、もろに経済的に影響を及ぼしますので、だまっていても燃料削減の努力は続くことでしょう。

またリサイクルも盛んです。使用済み料理油を有機栽培農家に提供したり、ガラスやメタル、木材、紙などのリサイクルもまた盛んに取り組まれています。私達乗客も、大量に食べ残したり、水を浪費したりしないように気をつけなければなりません。

しかしながら、クルーズ船の全体の船舶にしめる割合はわずか0.2%にしかすぎません。かなり前、関門海峡のど真ん中で沈没した中国船を中国がそのまま放置したり、北朝鮮の船など、かけがえのない海を守るための努力をしない船も多数あります。領海の内側なら、その国が厳しく取り締まりますが、公海上では国際的に取り締まるのは極めて難しい状況です。

クルーズ業界が率先して、「かけがえのない地球を守る」模範を示して貰いたいし、またその動きも極めて活発なのは嬉しいことです。



128.Re: クルーズと環境問題
名前:桑原    日付:2007/10/26(金) 20:46
 この掲示板では以前も環境問題に関する議論がありましたので(#26)この話題は興味深いものですが,環境問題を考えるには生活圏や生態系の局地的な保護と,地球規模の長期的な環境保全という 2 つの問題を分けて,そのバランスを考慮する必要があると思います。

 例えば排水・廃棄物の処理を船内で行うことは航路に近接する生活圏や生態系の保護には有効ですが,その処理には莫大なエネルギー(= CO2 排出)が必要ですので,何でも船内で処理しようとすればそれはかえって地球規模の悪影響を及ぼします。きれいな海に排水を投棄するというのは,一見とてもおぞましいことに思われますが,一定の条件を守って陸地から離れた場所で投棄すれば,かえって生物分解や光化学反応などの海洋の膨大な自然浄化力(すなわち太陽光エネルギー)を有効に活用できるものです。
 海洋投棄が問題になるのは,それが主に沿岸や湾内など拡散しにくく生活圏や生態系を直接ダメージする水圏でなされるからです。だから,クルーズによる海洋汚染を防止するためには,近海を巡回するカボタージュ船に対しては排出を厳しく規制することは当然としても,遠洋を航行するトランパー船に対してはむしろ海洋投棄の諸条件に関する研究を進めてルール化するといった柔軟な対策も必要だと思います。
 資源の節約やリサイクルについても,実際には地球規模の考え方が必要で,陸上との連繋を考慮しなければ実効的な効果は望めません。一見華美な浪費に見えるクルーズだけが槍玉に揚がって,その他の分野での省資源が疎かになってしまうとしたら,それはかえって環境保護への逆行となるでしょう。

 クルーズ船に望まれるのはむしろ環境保護のための広告塔としての役割ではないでしょうか。その点「クルーズ業界が率先して模範を示す」というのは,確かに大切なことだと思います。環境に優しいことは得てして財布に優しくなかったりしますが,他の船舶に比べクルーズ船はイメージ戦略のための投資がしやすいという利点を生かし,環境保護とレジャーが結びついた新しいタイプのクルーズが誕生しても良いのではないでしょうか。
 例えば,帆装クルーズ船で知られる Star Clippers などは,帆装の経済性とディーゼルエンジンの安定性を上手く組み合わせて 80 % の省燃費と安全性・定時性を両立した現代的クルーズの運航に成功しています。さすがに,他の外国船と比べて乗船料は割高のようですが(日本船と同程度?),単に環境に優しいというだけでなく,航行の静粛性や船体の美しさ,さらにはセイルドリルなどの帆船ならではの体験が,レジャーとしての価値を高めていると思います。
 環境問題はしばしば悲愴感を基調として議論され,環境負荷や資源を浪費する娯楽は怪しからんという結論を誘導しがちですが,それは間違った考え方だと思います。なぜなら,地球規模の長期的なスコープを持つ環境問題というものは,地球上の全ての人が継続的に議論すべきものであって,そのためには楽しみながら環境問題を考えるという視点が絶対に必要だからです。


129.Re: クルーズと環境問題
名前:藤原雄一郎    日付:2007/10/27(土) 7:9
桑原さん

記事でも述べていますように、クルーズ船の占める割合はわずかに0.2%です。しかし大型船になれば3000人以上の乗客がいるわけですから、乗客に対して大いに環境問題対応をPRすることは、啓蒙として大変に役に立つと思います。

また現実的に、各国の領海をはなれると、必ずしも厳しい管理をしていないようですので、これまた桑原理論に必然的になっているのではないでしょうか。

いつ、どの船だか記憶が定かではありませんが、領海を離れる前に排水投棄で警告か罰金を科せられた事例もあったようです。


130.Re: クルーズと環境問題
名前:バルクキャリアー    日付:2007/10/28(日) 10:4
船舶が排出するCO2は世界全体の排出量の約3〜4%だそうです。また貨物船、タンカー、コンテナ船などが排出量の1/3ずつを占め、客船のそれは統計には表れない位微々たるものの様です。輸送トンキロあたりのCO2排出量は、船舶はトラックの1/4、航空機の1/30で、その意味では船舶は鉄道についでエネルギー効率の良い乗り物です。

最近は、船舶を運航するに当たっての様々な規制が毎年毎年厳しくかつ複雑になっています。ISOの船舶版であるISM CODEの遵守は全外航船舶に求められます。船舶に関わる汚濁事故や環境汚染を防止するMARPOR条約などの各条約への対策を始め、国別では米国で油濁事故の賠償責任法案により、入港する船舶は油濁賠償事故に対応できる資力証明が要求されますし、豪州ではバラスト水の排出規制があります。またEUでは燃料油の硫黄分に関する新たな規制が始まりました。これらの規制は発行する組織がそれぞれの立場で条文を作るため、まずその解釈が難しく、現場に徹底するのに関係者は大変な労力を費やしています。

9・11以降はテロ対策の各種立法・規制(ISPS条約)や、米国を発着する貨物(乗客)名簿(マニフェスト)の電子化による事前提出など、新しいルールが次々発効、実施されています。客船はこれに加えて、にっぽん丸が発表している様な、各国の公衆衛生局の検査などがあるのでより大変でしょうね。そういえば、先のにっぽん丸では非難訓練の際救命ボートステーションに集まった全乗客の出席を取るなど、SOLAS条約で求められるルールを厳格に施行していました。

何か事件や事故がある度に新たなルールが制定され、関係者は右往左往していますが、それもこれも安全運航、環境保全の為のコストなのですね。このコストは年々高くなって行きますが、これらによってクルーズ船もその安全運航が担保されているのです。

問題は世界ではこういう安全・環境基準の外にいる国やサブ・スタンダード船が多数あるという事。フィリピンやインドネシアでは、毎年の様にフェリーが沈んで多数の乗客が亡くなる事故があり、サハリンでは沖に1,000トン位の廃船が多数放置されていました。CO2削減における米国の消極的姿勢ではありませんが、これら環境・人命にかかわる事は、世界で統一的に実施してもらいたいですね。海はつながっているのですから。


131.Re: クルーズと環境問題
名前:藤原雄一郎    日付:2007/10/30(火) 7:15
バルクキャリアさん

さすが専門家だけあって、感心しました。この内容は永久保存版に価するものだと思います。船舶に関する国際法について知りたかったのですが、良くわかりませんでした。

避難訓練での出席確認はそういえば最近厳しくなったような気がします。またその説明内容も、充実してきました。セレモニーではなくなったような気がします。

今後ともこのような専門知識のご披露をお願いします。


132.Re: クルーズと環境問題
名前:バルクキャリアー    日付:2007/10/30(火) 23:45
理論編が盛り上げり、フネが動く背景にこんな事もあるんだと知っていただければ嬉しいです。

私は今までほぼ営業部門だけで会社生活を過ごしてきたので、こういう法的な事や環境問題とはあまり縁がありませんでした。営業として傭船契約や船荷証券にサインする時にそういう項目が並んでいるな、という程度の認識でした。しかし第2の人生に入り、契約書を自らワープロで打ち、条文に目を通す必要が生じたり、顧客に和訳して説明しなければならなくなってきて、内容を多少じっくり見る様になりました。

日本橋 丸善で購入した藤原さんのご本「定年後 もう一度花を咲かせるための7つの鉄則」までには、まだ心持ちも、実際のリタイア生活にも少し時間がありますが、今まで社会から学んだ事が、僅かなりとも興味の対象となれば幸いです。


133.Re: クルーズと環境問題
名前:藤原雄一郎    日付:2007/10/31(水) 7:3
バルクキャリアさん

本を買って頂いたのですか。それはそれは心から感謝します。皆さんのおかげで、とても充実した第二の人生を送っています。こんなに幸せで良いのかなと思ったりして!!

今後ともよろしくお願いします。


134.Re: クルーズと環境問題
名前:みえこ    日付:2007/10/31(水) 11:23
バルクキャリアーさま

大変興味深くませていただきました。
先日のにっぽん丸のプラチナクルーズでは 大変に厳格に出席をとっていました。
マイクで名前を呼び出されていた人たちは デッキでの点呼に出て来なかった人たちでしょうか。

毎年 船舶運行に関しての規制が厳しく複雑になっているそうですが それについていけない国も多くあるのではないでしょうか。

初めて中国へ行ったとき 夜明けとともに目に飛び込んできたのは 航行する船舶からの黒い煙 そしてもっと明るくなったときの上海のひどい大気汚染と猛烈な黄砂現象で 上陸する前に気がめいってしまいました。
以前下関に住んでいたときに あのあたりは中国からの汚染された空気が流れ込むところらしく ひどい日もありました。

経済発展のため環境破壊など次のまた次って言う国は地球上にいくつもあるでしょう。
しかし次の時代のため厳しい規制が望まれます。


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