「不自由のなかにこそ、本物の自由へと至る道があるのかもしれませんね」と青年は語った。
山本兼一作『火天の城』(文春文庫)にふれての感想である。
安土城を築く城大工たちの物語だ。織田信長の要求は、南蛮風の前代未聞の天守閣。
その難題を、総棟梁・岡部又右衛門は、一歩も退かず受け止める。
どんな注文にも、又右衛門は決して「できない」とは言わなかった。
勇んで引き受け、全知全能を傾けてこそ「番匠(=大工)としての自分の才能がすべて開花させられる気がした」からである。
作者は総棟梁の人となりをそう描く。
自分の力は、自分で測れない。どうしても小さく見積もりがちだから。
苦労の壁にぶつかると人はその手前に限界線を引いてしまう。壁を突破するには力強く背中を押してくれる人が必要だ。
「城は腕で建てるのではない。番匠たちの心を組んで建てるのだ」との又右衛門の思いも、読み手の胸を打つ。
“心の団結”も大偉業には欠かせない。
安土城はしかし、3年しか持たなかった。本能寺の変の後、やがて戦火に包まれた。
我ら創価の「民衆城」は不滅である。
師弟の絆をたもち、いかなる苦難も“成長へのチャンス!”ととらえ、
日々前進する青年の熱と力がある限り――。(09.05.14) (栄)
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