尊敬する先輩から手紙をいただきました。彼は私のサラリーマン時代の上司で、未熟で出来の悪い部下だった私の面倒を見てくれた恩人ともいうべき人です。
優秀なビジネスマンでしたが、一方で教育家でもあり、文学者でもありました。彼は「文学散歩」という新分野を開拓した功労者でもあります。福井、石川にも文学愛好家を連れて訪れており、私が文学史跡を案内したこともありました。
彼は今、86歳。数々の大病を克服して今も文学活動にいそしんでおられます。近況を語られた最後にこういう文章を添えられたのです。
グリム童話の「寿命」という話を御存知でしょうか。要約しますと、 「むかし神様が動物たちにひとしく三十年という寿命を与えようとしたところ、ロバは『重い荷物を運び続けるには長すぎる』と十八年を辞退し、またそれぞれの理由で同じように長すぎると、イヌは十二年を、サルは十年を辞退し、あわせて四十年の寿命を神様にお返ししました。
ところが三十年の寿命では短すぎると考えた人間が、その四十年をそっくりもらって七十年の寿命を手に入れましたが、年齢を重ねるにしたがい、ロバやイヌやサルが予想したさまざまな苦痛を抱えることになりました」 という話です。
示唆にとんだ物語で、老後のわたしたちの病気や難義を暗示しています。 ごきげんよう
平成二十六年一月十四日 ○○○ ○ 様 ○○ ○○
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