こわい、というのはひどくあいまいな感情で、特に理由も無く嫌悪感に似た 恐怖を覚えるというタイプの恐怖感は個人の感性に抵触するのでなかなか他 人にわかってもらうだけの表現にいたるのは難しい。
このあとの話はなんというか、いやなかんじの寒気が残った話なのだが、そ れが一般的なものなのか、私とその話をした本人に特有の感じ方なのか、不 明である。 とりあえずみじかい話なので端的に書いてみる。
同じ学生寮に暮らしていた後輩から聞いた話だ。 ある晩のことだ。 長めのレポートを書き上げて、一安心しながら夜道をかえる途中だった。 あたたかい夏の夜。 信号待ちの一瞬。ここちよい風が流れ、彼女は一息つきながらおもわずせい いっぱいの伸びをした。 真上を向いてのけぞったそのとき。 眼前の空中に突然見知らぬ巨大な顔が現れてニヤリと笑ったという。
また、あるとき、同僚だった教師から聞いた話。 サッポロから千歳,トマコマイ方面に至る高速道路をよんどころない事情で かなりの高速でとばしていたときの話だ。 長都(オサツ)を抜けたあたりにさしかかったときだ。 むこうから若い男がとぼとぼとぼとうつむいて路肩を歩いてくるのが見える。 なんだ、この高速道路上で夜中に、あぶないったらありゃしない。苛立ち ながらも変わらず車を走らせていた。 が、一瞬のちにふと気づいた。 この近郊は自衛隊の演習場があるくらいで人家などまったくない地域。 真夜中にあの男はいったいどこから歩いてきたのか。 そしてまた、よく考えればあの高速走行のさなか、なぜとぼとぼという異 様にゆるいスピードでしずかに窓外をすぎていくことができたのか。
気付いてからの彼女は、寒気をこらえながらぎりぎりの低速で高速出口に たどりついたそうだ。
さて、あなたはこれ、コワイですか?
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