[ 携帯用URL ]
Record of war,Harmonia

[ EZBBS.NET | DoChat.NET | 新規作成 | ランキング | オプション ]
iモード&Vodafone(絵文字)、au対応!ケータイからも返信できる無料掲示板!
名前
 E-mail 
題名
内容
   タグ有効 改行有効 等幅フォント
URL



5.紅の守護者 −テオドール− 返信  引用 
名前:深海    日付:4月22日(火) 3時14分
抜けるように澄んだ高い蒼穹を振り仰ぎ、風が運ぶ草の香にテオは軽く瞳を細めた。柔らかい陽光は暖かく、さやかな風が程よい涼ももらたす。このような天気ならば木陰でのんびりと午睡と洒落こむのが何より相応しいだろう。
だが、彼はこれからこの陽気に最もそぐわない行為をなそうとしているのだ。それでも、テオはそれを悔いてはいないし嘆いてもいない。少々「あー、昼寝したかったな」と惜しむ程度だ。
頭上から後方へと視線を移す。人馬の群れの中に一際目を引く鮮やかな青。そしてそれに添う白。
テオの口元がゆっくりと弧を描く。あの二色の為であれば澄んだ頭上の碧を血色に染め替える事など躊躇うものでも惜しむものでもない。むしろ誇りにすら思う。あの二色こそがテオにとっての最上の色だ。
もういちど至上の二色を瞳に映してからテオは前方を見据え、腰に佩いた剣を抜いて頭上に掲げる。
瞬間、広がる蒼穹を鋭き鋼の煌きが切り裂いた。



6.(untitled)
名前:深海    日付:4月23日(水) 2時16分
時は少し遡る――

「パスティス? 珍しいところが出てきたもんだな」
このところ聞かなかった南西の小国の名にテオは率直な感想を述べた。
「ま、アレでしょ。ここんとこのゴタゴタに乗じてみました、ってヤツ」
長ソファを占領して寝そべり、手だけをひらひらと振ってヨーゼフがそれに返す。
「誰かさんのタッパ並にちっこいしー、ちゃんと自己主張しないと埋もれて見えなくってプチって踏まれるしー」
「んなにチビじゃねぇっ!」
「俺、誰かさん、としか言ってないぞ? 被害妄想?」
ヨーゼフのまぜっかえしに即座にテオが噛み付く。
自分の座る一人掛けソファの手摺に腰掛けているテオと向かいで寝そべったままのヨーゼフがそのままどつき漫才に突入するのを等分に眺め、ヒクサクは小さく笑みを零す。ヨーゼフのまぜかえしは無駄口以外の何物でもないし、存外生真面目なところのあるテオが即座にそれに喰いつくから尚エスカレートするのだ。テオもその辺りは理解している筈なのだが、性分なのかとっさに反論が口をついて出てヨーゼフを喜ばすだけ、という結末にばかり陥っている。
「で、ヨーゼフの読みはそれだけ?」
聞いている分には非常に楽しい漫才なのだが、話の軌道を戻すのは常にヒクサクの役目である。
「んー。あそこの王ってこないだ代替わりしたそうだし、前王を越える功績が欲しいとこだよな。んで、そんな時にウチ(アロニア)はまんまとローダンセと喧嘩してる。その隙にってのは定番のお話だよな」
ヨーゼフの手が卓上を彷徨う。さりげなく焼き菓子の乗った皿をその手の届かぬ範囲に移動させ、ヒクサクはなるほどと頷いた。
「それで好戦的なレオノティスじゃなくパスティスがちょっかいかけてきたのか」
「で、その相手を俺たちにしろって?」
焼き菓子を2、3個まとめて手に取り口に放り込み、テオが自分たちがこの場に集っている大元の理由に戻る。
「うん」
主力はローダンセとの睨み合い中につき動かせない。戦強国と名高いレオノティスならばそれでも精鋭を割かねばならぬが、相手は小国。これ幸いとばかりに扱いに困るヒクサクの軍を送り込むことにしたらしい。
「レオノティスだったら即効俺らの地位固めになるけど、パスティスじゃ旨味ないよなぁ」
上半身を起き上がらせ、パスティスの人間が聞いたら激怒するであろう不遜な台詞をヨーゼフは吐いた。
「かと言って負ければウチの因業爺どもの思う壺。どーすっかなぁ」
菓子の皿の端に指をかけたままヨーゼフは返事を期待しない問いを次々と口にし始める。
鋭さを増していく友人の碧眼にテオは小さく嘆息した。己をからかってばかりいる彼だが、その知略には全幅の信頼をおいている。
この小さな戦を初陣以来無聊を囲っていた自分たちが勇躍するための足懸りとして策を練ると言うのならば、それは最大限の効果を得ることをテオは疑っていない。
しかし、つい思ってしまう。もう少し普段からそうやってまともな顔してろよ、お前。と。
「テオ、先陣やる?」
ヒクサクの静かな声にテオは力強く頷く。
ヒクサクが灯を掲げ、ヨーゼフが道を引き、自分が切り拓く。
「露払いは俺の役目だろ?」

4.敵陣営にて ユーリウスとラオ師 返信  引用 
名前:深海    日付:1月3日(木) 6時10分
カツ、と軍靴の音が夕暮れの薄闇に響く。
露台にて落日を愛でていた老人は手にした茶器をもてあそびながらその音の主が此方へ向かうのを静かに待ち受けていた。
「こちらにおいででしたか」
どこか茫洋とした雰囲気を漂わせ男はごくさりげない仕草で老人の隣に腰を下ろした。
「なんじゃ、この老骨をわざわざ捜すような用なぞおぬしにはあるまい。ついでに言うとおぬしの分の茶はないぞ」
ふんと鼻を鳴らす老人に対し、男は曖昧に笑い視線を老人と同じく朱空へと飛ばした。
「………アロニアのかの神官殿ですが…」
しばしの沈黙の後、ぽつりと男が零すように呟く。
「あの小童の首にでも迫ったか?」
「まさか。姿は遠目に窺えましたが」
老人は茶器を傾け喉を潤すと呵呵大笑した。
「見目麗しい小童であったろう? 戦場の血泥におよそそぐわぬな」
「ええ、ですが兵は見事に掌握している。成人すらしていなさそうな少年に熟練の武士が命を預ける程に信頼を寄せる、これはそうそうお目にかかれないものだと思います。……まったく、あちらの王宮なり神殿なりの華でいてくれればこちらとしては有難かったんですがね。天ってヤツは時々二物も三物も与えちゃうんだからタチが悪い。俺にも分けてくれればいいのに」
「心にもない愚痴を言うな」
「いや、だって。向こうは若くて麗しい将来有望な神官殿。対してこちらはゴロツキのまとめ役なだけの冴えないオッサン。どう見たってあちらさんの方が神さまに贔屓されてますって」
「しかし、まだまだ小童にすぎん」
「ただの小童があーんな策やってきますかね。あーゆーのを悪辣ってんですよ」
それまで飄々とした口調を崩さなかった男がその最後の言葉だけは苦々しさを隠し通せないでいた。
しかし、老人は愉快そうに口の端をゆるりと持ち上げただけだった。
「なに、そのおぬし曰く『悪辣な策』を隠しもせずにやってのけるあたりがまだまだ青い証拠よ。で、本気で儂相手に愚痴を言いに来たのか?だったらここから蹴り落とすぞ」
男は空から老人に視線を移し、思いがけない事を聞いたと言わんばかりに目を瞬かせた。
「愚痴、言ってました?」
「愚痴しか言っとらんわ」

3.全ての終わりの後 返信  引用 
名前:深海    日付:12月15日(土) 6時12分
目の前で泣き崩れる蜜色の髪の女性を青年はただ見つめるだけだった。
傍から見ている者にはどう声を掛ければ良いのか判らずに立ち尽くしている、と映ったかもしれない。
女性は泣きながら何度もごめんなさい、ごめんなさいと青年に謝り続ける。
何も知らない女性(ひと)だった。
青年の友であった彼は彼女には何一つ語らず悟らせず全てを隠し通してきた。
彼の立場も葛藤も――苦悩の果ての決断も
それらに彼女は決して無関係ではなかったにもかかわらず、彼は秘め続けたのだ。秘して彼女を守り続けた。
今しがた青年が刃を振り下ろした男―彼女と彼の父親―が暴露しなければ彼女は一生知らぬまま、彼が望んだままに守られていたかもしれない。
しかし、今、彼女は知ってしまった。それ故の涙であり謝罪だった。
―ごめんなさい、私のせいで―
青年はゆっくりと跪くと彼女に柔らかな声をかけた。
「貴女にそう泣かれたら彼も浮かばれませんよ」
口元には仄かな笑み。
「彼は貴女だけは守り抜きたかった。その想いを判ってあげて下さい」
女性は両手で顔を覆ったまま力なく首を振った。
―でもそのせいであの子は―
彼にとって彼女がそうであったように彼女もまた彼をかけがえなく思っていた。彼が幸福であることを望んでいた。良い友人ができたと笑う彼がいつまでも友と一緒に在れる様にと祈っていた。彼の為であれば己を犠牲にしても良いと思っていた。
…だが、犠牲になったのは彼の方だったのだ。
常に己を犠牲にし続けたのは彼だったのだ。
それに引き換え、彼女は今ですら詫びることしか出来ないでいる。
ごめんなさい
それしか吐けない己自身に憎悪すら覚える。
ごめんなさい
彼の代わりに自分こそが■■べきだったのに。
さらりと、
青年が彼女の金の髪先を掬い取った。
「彼の友人として、僕からもお願いします。貴女は生きて幸せになってください」
そして、これは僕の我侭ですが、と青年は前置きし
「彼の血統を絶やさないで欲しいんです。僕は僕の最高の軍師の誉れをずっと伝えていって欲しい。彼の存在が話の中にしかいないなんていうのはイヤなんです。彼がいたことを血肉をもって証明していって欲しいんです」
彼女はいつしか涙も忘れ青年を見上げていた。
「酷い言い草だとは思います。貴女に幸せになって欲しいと言いながら、彼の為に一生費やせと言っているようなものですから」
いいえ、と彼女は先ほどとは別の意味で首を振った。
彼女にとってはその言葉こそが救いだった。償いの仕方を教えてもらえたのだ。彼女は再び涙を零した。
それは、彼を犠牲にし続けた自分が今度こそたった一人の大切な弟の為だけに生きていけることを喜んだ涙だった。

2.テオちゃん人事異動(笑) 返信  引用 
名前:深海    日付:11月11日(土) 3時3分
「賭けないか?ヒクサク」
たった今書上げたばかりの書類を手に、ヨーゼフは楽しくてたまらない、と云った様子の笑みをヒクサクに向けた。
「賭けにならないと思うけど?」
書類に落とした目を上げることすらせずヒクサクはそう返す。
普段から笑みを浮かべていることの多い彼ではあるが、心から楽しげに笑う内容は存外限られていて、付き合いの長いヒクサクなどはその笑みの指す先が何かなど我が事のように容易く解ってしまう。
「もう賭けの対象が向かって来ているようだし」
ヒクサクの言葉に被るように慌しい足音が響き二人の鼓膜を振るわせた。

「どーゆーことだよっ!これっ!!」
バン、と蝶番が外れかねない勢いで扉が開かれる。
肩で息をし、頬を紅潮させた黒髪の若者は戸を開くや否やそう叫んだ。
「どーゆーことも何も、辞令のまんま。それとも、読めない字でもあったか?テオちゃん」
手にした書類を扇ぐように動かし、ヨーゼフは子供を揶揄うような口調でテオドールに答える。
「俺が言いたいのはそーゆー意味じゃないっ! 俺をヒクサクの護衛から外すってどういうつもりだって聞いてるんだ!」
彼自信より10センチは上背のある友人兼軍師の胸倉を掴み上げ、俺以外の誰がヒクサクを守れるっていうんだ!とテオドールは語気も荒くがなりたてた。
「うわ、熱烈。ヒクサクってば愛されてるなぁ」



−−−−−−−−−−−−−−−
続きは後日

1.小ネタ投下 返信  引用 
名前:深海    日付:2月4日(土) 1時0分

見張り台の上から見下ろす景色は荒涼とした冬の草原のみ。
朔風が揺らす枯れた草以外に動くものは何一つ見当たらない。
「どうやら本国で年を越すことはできなさそうだな」
蜜色の髪をした青年が草原の彼方を腕を組んで見遣り乍ら呟いた。
「…せめて新年くらいは家族と過ごさせてあげたかったんだけどね」
柵に肘を掛け栗色の髪を風に靡かせ、この軍を統べる若き将は柳眉を潜めた。
「年明けの一日くらいは戦もせずにすむだろうし、少しくらいなら新年の祝いもさせてはやれるけど……な」
「それくらいしかしてあげられないか…」
小さく溜息をついた優しすぎる親友にヨーゼフは少しだけ彼の憂いを融かす言葉を紡ぐ。
「そう長くはここに留まらないつもりだけどな。建国祭には帰れるようやってみるさ」
アロニアの建国祭は春になる直前、三月の後にある。
思わず彼の軍師の顔を振り仰いだヒクサクにヨーゼフはそ知らぬ顔で話を替える。
「新年の祝いな、多少は酒も出せるんじゃないか? どーせ向こうさんだって似たような事考えてるだろうし」
「どのくらい糧食に残ってたっけ?」
ヒクサクの顔にちらりと何か言いたげな色が浮かんだが、結局は親友の話に乗る事にしたらしい。
見た目に寄らず酒好きのヒクサクからすればヨーゼフの提案は歓迎すべきものでもある。特に普段その立場と酒癖の悪さから飲酒を窘められている分、尚更に。
しかし、ヨーゼフは軽く身をかがめ、幼馴染の顔を覗き込むとニヤリと笑ってみせた。
「お前は駄目」
「え?」
「俺とお前とテオは禁酒。兵たちは良いけど上の俺らが潰れるワケにゃいかんでしょーが」
一応いざってものを考慮にいれなきゃなー
などとケラケラ笑うヨーゼフにヒクサクは憮然とした面持ちでぼやいた。
「そんなに僕にぬか喜びさせて楽しい?」
「当然」
ヒクサクの酒癖の最大にして唯一の被害者は心底楽しげな人の悪い笑みを浮かべて見せた。


ページ: 1 

無料アクセス解析

アクセス解析の決定版!無料レンタルで最大100ページ解析!

   投稿KEY
   パスワード

EZBBS.NET produced by InsideWeb