(80)勅命
翌朝、和子は真っ青な顔で私達に告げました。
「浩美、桜、私はこれから帝都の義母上(櫻山薫子大将待遇軍属、女子挺身隊参謀本部参謀総長)に謝罪に行くわ。帝都では、被災家屋20万戸以上、被災者は100万人以上、死者は・・・・10万人以上・・・かもしれない・・・。これは、全て眠ってしまった私の責任よ。私がもう少し頑張って起きていれば、1000kmくらい南方でB29を発見できたわ。そして、10時頃に防空部隊が発進していれば・・・B29の半分は落とせていた・・・。 自決は免れないわね。」
そして、和子は一人で帝都に出かけて行き、夕方、戻って来ました。思いのほか元気そうでした。
「和子、良かったわ! ママ母に詰め腹切らされているかも? と思っていたわ!」 「本当ね! 良かったわ!」 「ふん、桜も浩美も本当に能天気ね! 私は死ぬよりもよっぽど辛かったわ。」
女子挺身隊参謀本部に赴いた和子に、和子の義母の櫻山薫子大将は、
「これから陛下に馬鹿娘の失態を詫びに行くわ。付いて来なさい!」
と厳命したのだそうです。
「私達が宮城に参内しようとしている時に騎馬で宮城を出てくる一行があったの。驚いた事に、先頭は白馬に跨った陛下よ。」
そして、櫻山薫子大将と和子もお供をして、被災地に向いました。そして、死体が散乱する中で、陛下に御言葉を賜ったそうです。
「櫻山夫人、その者は夫人の令嬢か?」 「はい、陛下。私の夫が妾に産ませた娘でございまして、私とは為さぬ仲でございますが・・・実の娘同様、愛しております。愚か者でございますが、私に免じて御赦し下さい。」 「櫻山夫人、我が忠良なる臣民が、そなたの娘の怠慢により十万人近く死んでおる。絶対に許さぬ!」 「はい、陛下。陛下の仰せは誠にごもっとも。臣、和子、死んでお詫びを!」 「馬鹿者! 死ぬ事は許さぬと申しておるではないか! 櫻山夫人にも命じる! 断じてそなたの令嬢に自決など許すな! 生きて奉公し、名誉を回復せよ。これが朕が櫻山家とその令嬢に命じる罰である!」
その時、厳めしい顔をされていた陛下が、突然、優しい顔になられたそうです。
「和子ちゃん。君はまだ14歳なのだよ。生きなさい。 死ぬ事は大人の男達に任せなさい。」
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